HinT table 04

開催日時:2020年12月5日(土)20時-22時

場所:Zoom

参加メンバー(五十音順):上地里佳、大橋香奈、小島和子、髙山伸夫、田中翔貴、ピッチャー・スパンタリダー、松尾葉奈

記録:大橋香奈

「チェックイン(出席確認をかねて、会の冒頭で全員が一つの「お題」に答える)」からスタート。お題は、葉奈ちゃんからの提案で「好きな鍋の具」。このお題、実はちょうど1年ぐらい前にHinTで集まった時の「チェックイン」でも使われたので、みんなでその頃を思い出して、懐かしくなりました。1年前は、対面で集まり、食事会をするのもあたりまえで楽しかったなと、切ない気持ちにもなりました。

ヌイ(ピッチャー・スパンタリダー)は、留学期間を終え、先日タイに帰国して、現在、入国後義務付けられる14日間の隔離期間中で、タイのホテルからの参加でした。タイ人であっても海外から帰国したら新型コロナウイルスの感染リスクが疑われるため、指定されたホテルの部屋に隔離され、食事は支給されたものを食べ、行動は管理されるとのことです。部屋の窓から外を見たり、家族や彼とオンラインでやりとりしたりするぐらいしかできないということでかわいそうでしたが、この会には元気に参加してくれて安心しました。

今回はメンバーの作品上映などの希望がなかったので、私からの話題提供ということで、勤務する東京経済大学コミュニケーション学部で開講中の「移動の生活学」での講義内容の一部を紹介しました。

文化人類学者のティム・インゴルドが著書『ラインズ 線の文化 史』の中で、「徒歩旅行(wayfaring)」=歩いて移動することの意味について議論している内容と関連させて、ある「徒歩旅行」のプロジェクト映像をみんなで観ました。

また、人びとの〈移動〉の経験について調査研究することを目的として、主に時間地理学の分野で使われる調査法の一つ「トラベル・ダイアリー」を、実際にみんなで書いてみてディスカッションしました。新型コロナウイルスの影響によって、私たちの日常生活における〈移動〉の経験が、具体的にどのように変化したかを知る手がかりとして、時間地理学の考え方や、「トラベル・ダイアリー」が有効であることを実感しました。

HinT table 03

開催日時:2020年10月31日(土)20時-22時

場所:Zoom

参加メンバー(五十音順):大橋香奈、小島和子、髙山伸夫、田中翔貴、鄭禹晨、染谷めい、ピッチャー・スパンタリダー

記録:大橋香奈

いつも通り、「チェックイン(出席確認をかねて、会の冒頭で全員が一つの「お題」に答える)」からスタート。今日のお題は、私から提案しました。「最近、グローバルを感じた身近な出来事」。印象的だったのは、帰省中で台湾から参加してくれた鄭さんの話。コロナ前は2,3ヶ月に一度は帰っていたのに、コロナが始まってからずっと帰れず、半年以上ぶりの台湾とのことでした。滞在中のアパートのエレベーターに、ゴミ捨ての説明の紙が貼られていて、6か国語で表記されているのを見て「グローバル」を感じたと話してくれました。前回の帰省の時にはそこまで多くの言語に対応していなかったので、介護や家事の手伝いで働くために移住してきたヘルパーさんたちの出身国がここ数ヶ月で多様化したのかなと、急速な変化を感じたいうことでした。そのほかの参加者のみなさんからは、自宅近くや、近所の商店街を歩いていて聞こえてくる言語が多言語になったことや、ケータイショップの店員さんが外国人だったことなどが、グローバルを感じた身近な出来事として紹介されました。

チェックインの後、この日のメイン、ヌイ(ピッチャー・スパンタリダー)が大学の卒業プロジェクトとして制作した映像作品『Under the Same Roof:
a personal documentary』の上映会を実施しました。プロジェクトの詳細は、ヌイのウェブサイトで見ることができます。

  • ピッチャー・スパンタリダー『Under the Same Roof: a personal documentary』
    ヌイは、2016年に留学のためタイから日本に引っ越してきました。実家から遠く離れて異なる文化に身をおいたことで、それまであたりまえだと思ってきたタイでの生活を、とらえなおすようになったと言います。家族で会社を経営しているヌイの実家には、子どもの頃から「お手伝いさん」たちがいました。家族のように近くにいながら、家族とは違う存在として、タイの実家での生活を支えてくれていた人びとのことを想い、ヌイは卒業プロジェクト『Under the Same Roof: a personal documentary』に取り組みました。

    この作品をつくる過程で、ヌイは留学で一度離れた実家に戻り、家族と家族をとりまく人びとを対象にした「参与観察」を数ヶ月間かけて行いました。人類学や社会学のフィールドワークで行われる「参与観察」は、一般的には、自分がそれまであまり関わったことのなかった人びとの生活の現場を対象とすることが多いですが、ヌイの場合は、自分の実家が対象でした。ヌイは、自分とともに「Under the Same Roof(一つ屋根の下)」で生きてきた人びとの関係についてあらあためて考え、映像作品として描き出しました。彼女のリサーチのプロセスは、たびたび共有してもらっていたし、私は既に一度作品を観たことがありましたが、あらためて今回観てもひきつけられ、心を動かされました。冒頭の「チェックイン」の時の鄭さんの話題ともリンクして、作品をみんなで観た後のヌイとのディスカッションも盛り上がりました。

HinT table 02

開催日時:2020年9月19日(土)20時-22時

場所:Zoom

参加メンバー(五十音順):上地里佳、大橋香奈、小島和子、神野真実、髙山伸夫、田中翔貴、鄭禹晨、西井彩、橋本隆史、ピッチャー・スパンタリダー、廣瀬花衣、松尾葉奈

記録:大橋香奈

恒例の「チェックイン(出席確認をかねて、会の冒頭で全員が一つの「お題」に答える)」からスタート。今回のお題は、小島さんからの提案で「ひと夏の思い出」。新型コロナウイルスの影響がやや落ち着いてきて、これまで数ヶ月間控えていた外出、遠出をしたという人が何人かいました。話題の「ワーケーション」を試してみたという話も。9月に大学や大学院の卒業を迎えた、免許を取得した、就職が決まったという人もいて、お祝いムードのひとときを過ごしました。

今回は、昨年度のHinTの活動の成果として参加メンバーが制作した映像作品のうち2作品の上映とディスカッション、HinTの運営を手伝ってくれていた廣瀬花衣ちゃんによる修士論文発表と質疑応答を行いました。

上映作品は以下の2作品。(各映像作品の詳細についてまとめられた作品ノートは、「東京プロジェクトスタディ ‘Home’ in Tokyo」(HinT)の冊子のPDFでご覧いただけます。以下は冊子からの画像転載です)

  • 鄭禹晨『home in Tokyo(未定)』

台湾出身の鄭さんが、同じく台湾出身で東京で暮らす友人のパンさんとの関わりを通して、「アイデンティティ」「文化」「家族」を考え、描いた作品です。東京にいるときは台湾を想い、台湾にいるときは東京を懐かしむ。二つの場所の、それぞれの音、風景、ことば。映像の中で、それらが絶妙に切り替わります。二つの場所で、その間で、現れて、揺れ動く’Home’観がおもしろいです。

  • 橋本隆史『お隣さん』


取り壊しが決まったアパートで暮らしていた橋本さんが、自分と同じようにやむをえず立ち退くことになったお隣さんの、引っ越しのプロセスを記録した作品です。物干し竿代わりに使っていた玄関先の柵に、洗濯物を干す際に、顔を合わせ、おしゃべりするようになったお隣さん。友人でもない、家族でも親戚でもないけど、生活空間の一部を共有している「お隣さん」という、古くてこじんまりしたアパートならではの関係性がとてもよく描かれていておもしろいです。また、暮らしなれている、気に入っている場所を、予期せぬやむをえない事情で離れなくてはならなくなることの意味について考えさせられます。

以上の2作品の上映&ディスカッションの後に、廣瀬花衣ちゃんによる修士論文の内容をベースにした発表と質疑応答を行いました。

  • 廣瀬花衣「全天球映像を用いた「ビジュアル・フィールドノート」の作成」
    論文要旨:
    本研究は岩手県盛岡市における「材木町よ市」内のベアレンビール店舗周辺を対象としたフィールドワークの過程で撮影した全天球映像記録の表現形式の確立と視聴を通して、調査者だけの目線だけではなく、多様な視点から現場を理解する事を目指す研究である。
    研究全体は以下の構成である。
    1)フィールドワークの実施(岩手県盛岡市材木町よ市のベアレンビール前にて)
    2)フィールドワークの振り返り
    3)ビジュアルフィールドノートの制作
    4)ビジュアルフィールドノートの視聴
    著者は岩手県盛岡市「材木町よ市」のベアレンビールを対象としたフィールドワ
    ークを約1 年半に渡って実施、全天球映像の特性を理解し、調査者だけの視点だけではなく非調査者の視点も付与されるビジュアル・フィールドノートという表現形式の提案をした。実践を通じ、非調査者を「経験の専門家」として調査に巻き込む事によって、材木町よ市ベアレンビール周辺の複層性、また調査者1 人だけでは気づく事ができなかったフィールドの一面を引き出す事ができた。さらに、テクノロジーが前提になったフィールドワークにおける新たなフィールドワーカー像を示した。結果として、「ビジュアルフィールドノート」の作成を通じ、全天球映像を使う事によって可能になる “ 脚注を付け続ける”、”終わらないフィールドワーク”の
    方法を示した。

花衣ちゃんの研究については、途中経過を共有してもらっていたので、最終的に修士論文をどのようにまとめたのかを、この機会に発表してもらえてとてもうれしかったです。アクションカメラ等の撮影・記録技術が進化するなか、フィールドワークのあり方はどのように変わっていくのか、あるいは変わらないのかについて、実践にもとづいて検討した内容はとても刺激的でした。私自身は特に、カメラを用いたフィールドワークをめぐる倫理的な問題に関心があり、全天球カメラによって記録されたデータの扱い方については今後も考えてみたいと思いました。

花衣ちゃんの研究内容については、日本デザイン学会の研究発表大会での原稿も公開されているので、そちらもぜひご覧ください。→https://www.jstage.jst.go.jp/article/jssd/67/0/67_216/_pdf/-char/ja

HinT table 01

開催日時:2020年8月10日(月)19時-21時

場所:Zoom

参加メンバー(五十音順):上地里佳、大橋香奈、神野真実、髙山伸夫、田中翔貴、鄭禹晨、橋本晴加、松尾葉奈

記録:大橋香奈

第1回のHinT table、本当は7月下旬に開催を予定していましたが、主催者である私が食あたりによってダウンしてしまったため延期。6月のキックオフミーティングでHinT tableの活動開始を決めてから2ヶ月経ってしまいましたが、ようやく一昨日開催することができました。

HinT tableは、昨年度の「東京プロジェクトスタディ ‘Home’ in Tokyo」(HinT)の活動で恒例だった「チェックイン(出席確認をかねて、会の冒頭で全員が一つの「お題」に答える)」からスタートました。今回のお題は、田中さんの提案で「最近、夏を感じたこと」。家族が作ってくれたきゅうりの浅漬けを食べたこと、送られてきた桃でジェラートを作ったことなどなど、ちょっとした話をきっかけに、各メンバーの近況を聞くことができました。新型コロナウイルスの影響で、依然としてみんなさまざまな制約、不自由さを感じながら生活していますが、そんななかでも、それぞれが工夫していることや楽しんでいることを聞けたのも嬉しかったです。

今回は、昨年度のHinTの活動の成果として参加メンバーが制作した映像作品のうち、3作品を上映して、みんなでディスカッションしました。もともと映像作品の上映会は2月に実施する予定で会場もおさえていましたが、新型コロナウイルスの影響で延期となり、いまだに開催のめどがたっていません。そこで、オンラインでのHinT tableで、少しずつ上映と対話の時間をつくることにしました。

今回の上映作品は以下の3作品。(各映像作品の詳細についてまとめられた作品ノートは、「東京プロジェクトスタディ ‘Home’ in Tokyo」(HinT)の冊子のPDFでご覧いただけます。以下は冊子からの画像転載です)

  • 田中翔貴『人間的 Home Home 的人間』

  • 神野真実『GONDOLA』

  • 松尾葉奈『OCEAN』

画面共有の機能を利用したZoomでの上映会、離れた場所にいながらもみんなで一緒に作品を鑑賞することができました。画質はやや問題がありましたが、音質は問題なく、そこまでストレスを感じずに鑑賞できてよかったです。みんなで一緒に一つ一つの作品を観て、ディスカッションする時間を待ち望んでいたので、それが遠隔ではありましたが実現できたのが何よりでした。

昨年度のHinTの活動のプロセスで、お互いの作品の背景や内容について、いろいろな場面で共有してきましたが、活動が終了してから半年が経ち、作品の最終版が大きく変化した人もいるし、観る側(作り手本人も含めて)の状態や観る側を取り巻く状況も変化しました。鑑賞後のディスカッションでは、そうした変化の影響で、お互いの作品に対して新たな疑問や解釈が生まれました。映像とナレーションの関係、字幕の色やフォントの選び方など編集意図についての具体的なことから、それぞれの作品を通して考えた ‘Home’という概念についての議論まで、もりだくさん。

今後のHinT tableでやってみたいこととして、それぞれの作品の最終版には使われなかった写真や動画をはじめとするさまざまなデータを互いに見せ合い、ふりかえりながら語るというアイディアがあがりました。私自身、編集における取捨選択では葛藤することが多く、そのことについて短い文章を書いたことがあるので、このアイディアは是非とも実現させたいと思います。